2025年の果樹園だより

皆様、お変わりありませんでしょうか。今年もまた収穫の秋が巡ってきました。

朝夕の寒さが、緑の葉を黄色へと変化させ、収穫を待つ林檎は日に日に赤く色付いています。

 今年は、春の受粉の時期に寒さと風による影響でミツバチが飛ばず、着果不足の懸念から始まりました。当園は、人工的な受粉ではなく、養蜂所からミツバチの巣箱を借りて受粉をしています。林檎の花の受粉時期は短く、その間にミツバチが飛ばないと着果せず不作となってしまいます。急遽、養蜂所に追加で巣箱を設置していただき、どうにか最小限の被害で食い止めることができました。また、ここ数年の異常な夏の暑さは皆様が感じている事かと思います。当園の所在する会津地方でも猛暑日が続き、極端に降雨量が少ない夏となりました。林檎は雨が少ないからといって安易に灌水をしてしまうと翌年以降の生育と味に大きな影響を与えてしまいます。収穫までの日数を逆算し、作業時期の調整や地面の温度を上げないように草刈高の調整など、その樹の品種や種類、成長に応じて対応してまいりました。大きすぎる自然の力の中で、過保護に植物を守るだけではなく、時にはその生命力を信じて育てていくことが、美味しさに繋がって行く事だと改めて考えさせられました。そのかいもあり今年の林檎は例年よりも糖度が高く、林檎本来の美味しさが十分にでた出来となっております。

さて、連日のニュースでは熊の出没や被害が取り沙汰されています。四方を山に囲まれた会津地方でも毎日のように情報が飛び交っております。多数のお客様からご心配くださる声をいただきました。当園は現状、被害等はありません。しかし、近隣の地域では目撃情報や被害も報告されておりますので、朝夕の一人での作業はしない様にしております。クマの出没理由は様々ありますが、一説によると温暖化も原因の一つだと言われています。今まで山々で食べていたものが気候変動により不作となり餌を求めて里に降りてくるといった事が理由だそうです。この温暖化の影響は、林檎栽培にも大きな影響を与えています。特に晩生ふじにとっては、色付きと完熟時期の遅れが顕著に出ています。林檎、特にふじは寒さから身を守るために糖度を蓄えようとします。その糖度が蓄えられる過程で実に赤い色を付け、完熟へと向かわせるのです。当園は数年前から温暖化に強いふじに改植を進め、影響の出やすい古い木は完熟を迎える11月下旬から収穫することで美味しさを保てる様に対応しております。

親子三代、六十余年続く果樹園として、何よりも「美味しさに拘る」ことが私達の一番の仕事と考え、今後も自然と向き合いながら、皆様に喜んで頂ける林檎を育ててまいります。

冬の足音が聞こえそうな11月下旬。当園の収穫が間もなく始まります。

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